しかし、再び立っていられないほどの揺れに襲われ、佳織さんは、はいつくばりながらなんとか家の外へ脱出。次の瞬間、隣の家のカーポートが佳織さんの体に覆いかぶさるように落ちてきて、降り注ぐがれきから守ってくれた。

 揺れがおさまり、カーポートの下を出て自宅を見てみると、翔太さんがいた部屋は、崩落した2階部分に押しつぶされていた。佳織さんは、がれきの山と化した家の前で、何度も何度も「翔ちゃーん!」と叫んだが、返事はない。

 がれきをどかそうにも自分の力ではどうにもならず、大通りにいた消防隊員を自宅に連れて行った。しばらくは、一緒に翔太さんの名前を呼び続けたが、隊員に「余震が危ないので、いったん避難しましょう」と言われ、泣きながら消防車に乗せられた。その日は、消防署で一夜を過ごした。

 翌2日も、消防隊員や自衛隊員を見つけては翔太さんの助けを求めたが、輪島朝市通り周辺で大火災が起きていたこともあり、「人員が足りないのですぐには行けません」と、取り合ってもらえなかった。

 夕方、再び自宅に戻ると、近くの民家で自衛隊が救助活動をしていた。

「夫も埋まっているので、次はこっちをお願いします!」

 すがるようにお願いして、十数人の自衛隊員による捜索が始まった。

自衛隊員「手が見えます」

 30~40分ほど経ったころだろうか。がれきをどかしている隊員の1人が、「手が見えます」と声を発した。崩れ落ちた2階部分を解体していくと体が見えてきたようで、救護班が呼ばれた。

 佳織さんから翔太さんの姿は見えなかったが、救護班の女性隊員が「翔太さん、がんばって」と呼びかけながら、脈と呼吸を確認していた。すると隊員は、佳織さんにこう告げた。

「心臓マッサージをするので、ご家族はいったん車に乗られてください」

 佳織さんは、「(翔ちゃんは)今までずっと一人だったので一緒にいます。出てくるまでいます」と断った。しかし再度、車に乗るよう促されたため、「どういう状態なんですか?」と聞くと、「正直、息はしていません」と言われた。

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