※写真はイメージです。本文とは関係ありません(Shaifulzamri / iStock / Getty Images Plus)
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 ソフトバンク元副社長の松本徹三さんは異色のビジネスマンだ。商社マン時代には商社4社の衛星会社合併や世界初のプラットフォーム型の衛星放送サービス事業を力業で実現させた一方、40代後半には恥ずかしい程の大失敗も経験した。

 定年を待つことなく、商社を退職した後は、日本の通信業界に波乱を巻き起こした新興の外資系企業社長として活躍、それが孫正義氏の目にとまり、携帯通信事業に進出したソフトバンクの副社長にスカウトされた。

 その彼が82歳にして、まったく新しい海洋調査のベンチャー企業を立ちあげたのだ。なぜ今起業したのか?

 新刊『仕事が好きで何が悪い!』(朝日新書)には、松本さんの波乱に富んだ人生や仕事にかける思いが本音で語られている。80歳を超えてもなお、青年のように突き進む松本さんを支えるエネルギーとは?

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立ち上げた事業でボロ負けした過去

 雉も鳴かずば撃たれまい、という言葉があります。

 メスを求めて鳴いたオスは撃たれるリスクがありますが、素晴らしいメスと出会えるかもしれない。

 一方茂みにじっとしていて鳴かないオスは撃たれることはありません。しかしメスとは一生出会えない。

 どちらの人生を選ぶかは自由ですが、私は圧倒的に鳴き続ける人生のほうを選んできました。

 京大を卒業後、伊藤忠商事に入った私はいろいろな挑戦をさせてもらいました。成功したものもかなりありますが、空振りや失敗の方が多かったと思います。最大の失敗といえば、ニューヨーク駐在時代に始めたベンチャー事業です。

 それまで私は新分野の通信機関係の仕事でかなり実績を出しており、米国会社の上級副社長(エレクトロニクス部長)に抜擢されるほどでしたから、まあ「希望の星」だったわけですが、大市場の米国では大メーカーは軒並みに脱商社でしたから、何をすれば良いかわからない。

 そこへ、たまたまある米国人から「ベンチャービジネスというのを知っているか? これから世界をリードするのはこの仕事だよ」と聞かされ、「これだ」と膝を打って、一気にのめり込みました。

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ベンチャーという言葉を知らない人が殆どの時代