AIをうまく使いこなせるかが重要 イラスト/山田タクヒロ
この記事の写真をすべて見る

 私たちの国にはAIを取り入れて発展していく土壌が備わっているのだろうか。人工知能研究者・川村秀憲氏は、少子高齢化の社会構造、日本人の気質などから、日本はAIで世界をリードできる可能性を秘めていると分析する。著書『10年後のハローワーク』(アスコム)から一部を抜粋して紹介する。

【写真】一世を風靡したプロ棋士とコンピューターの戦いの対局シーンはこんな感じだった

*   *   *

 最近、日本や日本経済に関しての話題は悲観的で夢のないものばかりが多く、世界各国からの遅れや先進国からの「脱落」など、先行きを憂う論調が少なくないと感じます。一方で、そんな日本だからこそ、じつはAI時代の大きな変化を先取りし、「先行」できる大きな可能性を秘めているといったら、にわかに信じられるでしょうか? 

 しかしこれは、日本、あるいは日本人の大きな特徴であり、また知られざるメリットです。
 

すでにAIの手が必要な社会

 まずは、日本はすでに、否応なくAIの手を借りざるを得ない社会構造になっている点です。

 少子高齢化は、簡単には止められません。日本の総人口が減り始めたのは2010年代の半ばからですが、いわゆる生産年齢人口(15〜64歳人口)はその10年前にピークを打っています。すでに労働力が減り始めて、20年近くたっているわけです。

 もっとも、いまは65歳と言っても元気ですし、働きたい人、働かざるを得ない人もいます。また、この間にもインターネットや情報機器の普及で労働が効率化されてきたわけですから、まだどうにかなっていたわけです。

 ところがここに来て、要介護者はどんどん増えているのに介護をしてくれる人がいない、海外から観光客は押し寄せているのにホテルや旅館などで働き手が足りていないなどといった問題が広く共有され始めています。外国人を積極的に受け入れるかどうかの議論を待たずして、すでに多くの現場で外国人労働者や実習生、留学生が働いている姿を見るようになりました。

 つまり、「借りられるならAIの手も借りたい」のが日本の現状です。言い換えるなら、日本はAIの開発や導入に積極的な動機を持っている国だと言えるわけです。

次のページ
AIBOを可愛がるのは日本人の気質