〈おれの母親はよく泣く女だった。〉の一行から始まる、「千両」という名の枕男の物語。 泣き虫だった母親は、産婦人科医から画像を見せられ、赤ちゃんの体内にあるのは「蕎麦殻」だと告げられる。家族や親類が絶望の涙を流す中、彼女は産むと決める。生まれた子供の姿は枕にしか見えなかったという。 カフカの『変身』を思わす設定だが、「異形」の千両は差別にも挫けず成人する。荒唐無稽ではあるが、するすると読め、…

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