注)今回の反対署名活動を支持する女性弁護士は「公然わいせつの疑いがある」とメディアで述べているようだが、「おっぱい募金」は2003年以来、13回も行われ、しかもテレビ番組でも堂々と放送されているイベントである。違法性があれば、警察なり(電波行政を管轄している)総務省あたりがとっくの昔に動いているのではないか。僕は法律の専門家ではないので推測でしかないが…。

 もちろん、今回の反対署名活動にもロジックはある。ただし、彼らがchange.orgで掲げている声明文でのロジックは、日本の寄付文化の発展を妨げる可能性がある、とも僕は思っている。ここで主張されているロジックが「寄付のあり方として正しい」と多くの人に感じさせたり、そう理解させてしまっては、それこそ「日本の社会セクターの成長、寄付文化の発展」のために頑張ってきた人たちの努力を裏切ることにもなりうる、と思うからだ。

●利益のための募金は、悪いことなのか?

 念のためにお断りしておくが、当記事で僕が問いたいのは「おっぱい募金の是非」ではない。「寄付のあり方、考え方」についてである。その論点で、今回の反対署名活動の声明文に対して僕なりの反論を行いたい。

 まずは「反対する理由」だ。声明文では、次のように述べられている。

《以下、引用》
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「募金」とは名ばかりで、寄付する人はおっぱいを触るための対価としてのお金を払っているだけだからです。
(中略)
女性の体の中でも性的欲望を集めやすい「おっぱい」で「募金を集める」というセンセーショナルな企画アイデアで話題と人を集めることが目的です。女性の体も募金も、チャンネルの視聴者を増やし、企業が利益を上げるための口実でしかありません。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 企業が利益のために「募金」を標榜することは、悪いことではない。これがNGなら、いわゆるコーズマーケティング(CRM)はすべてNGだ。また、人気アーティストやアイドルによるチャリテイベントもNGだろう。目当てのアーティストやアイドルに会いたいだけの理由で、チャリティイベントに来るファンも多い。ここ数年で、せっかく企業のCRMや、人気芸能人のチャリティ活動も活発になってきているのに、それが否定されてしまっては日本の寄付文化も大きく後退してしまう。

●募金の「本来の形」は誰が決めるのか?

 次に指摘したいのは「寄付に対する基本的な考え方」だ。これはあまりにNPOの現場を無視したものだと言える。

《以下、引用》
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――
募金は本来、支援先に共感してお金を出してもらうものです。しかし来場客はおっぱいが揉みたくてお金を出しただけです。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

「自分たちの活動に共感した人からでなければ、寄付は受け取らない」とするNPOもたしかにある。しかし、募金に対する考え方はそれこそNPOごとに違う。たとえ共感がなくても寄付してくれる人はありがたい、と思うNPOもある。ほとんどのNPOは慢性的に資金不足に悩んでいることを考えれば、「共感のあるなしに関係なく、寄付をもらいたい」と考えるNPOのほうが多いだろう。

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