全国的な不漁に悩まされ、「共和水産」も9億円以上の負債を抱えることになった(画像=本人提供)

希望からの転落…会社は民事再生に

 鈴木さんは毎日のように王冠をかぶり、各地の飲食店に営業へ行ったり、子どもたちに魚料理を振る舞ったりした。次第にメディア露出も増えたことで「イカ王子」の認知度は宮古のみならず、東北から全国へと広がっていき、東京都内のイベントでも王冠をかぶる日が続いた。

「イカ王子と名乗るようになってから、会社の代表取締役専務に就きました。売り上げも右肩上がりになり、業績も回復しつつありました。コロナ禍では外出自粛となり、イベントの出店などはできなくなったものの、すでにネット注文にかじを切っていたことから、なんとか乗り切ることができました」

各地のイベントにも積極的に出店した(画像=本人提供)

 これからは明るい未来が待っている――そんな鈴木さんの期待を打ち砕いたのは、日本全国を襲った記録的な漁獲量の低下だった。

 前述のように、農水省の統計では22年の漁業と養殖業を合わせた生産量は、1956年以降、過去最低を記録した。同省によれば、不漁の背景として、海水温上昇による生態系の変化が大きいという。また、ロシア・ウクライナ情勢による原油価格の高騰で船の燃料代がかさむことから、漁を控える漁業者が多くなったことも一因と考えられる。

 これを受けて、宮古市内でも屋号を下ろす水産業者が増え、鈴木さんの「共和水産」も昨年10月、民事再生の手続きに入った。そして、「イカ王子」も王冠を外した。

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