「一生に一度は行きたい」と言われる新潟県長岡市の花火大会。毎年8月2、3日の2日間で打ち上げられる花火には、空襲や新潟県中越地震など数々の苦難の歴史と「慰霊」「復興」「平和」の想いが込められていた──。2023年の花火を20台を超えるカメラで追った圧巻のドキュメンタリー「長岡大花火 打ち上げ、開始でございます」。監督の坂上明和さんに本作の見どころを聞いた。
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初めて長岡の花火を観たのは25歳のときです。音と迫力に圧倒されました。長岡花火はほとんどが尺玉です。隅田川の花火で一番大きいのは半分の五号玉ですから。この迫力や魅力は映画館でなければ伝わらない!と思いました。
映画化にあたって長岡の歴史を改めて調べました。長岡は1868年に北越戊辰戦争で焼け野原になった。その後1879年に芸妓さんたちがあげたのが花火大会のはじまりです。1945年には長岡空襲で再び焦土と化し、2年後に花火大会が復活した。2004年には中越地震が起こり、翌05年に復興祈願花火「フェニックス」が打ち上げられました。花火は悲劇のたびに立ち上がってきた長岡の象徴なのです。
僕自身も中越地震で被災し、翌年の花火大会でフェニックスを観たときの感動は忘れられません。平原綾香さんの「Jupiter」にのせたそれまでとはまったく違うスケールの花火に誰もが度肝を抜かれました。ここから音楽とのコラボレーションが始まり、「慰霊」「復興」「平和」のメッセージがより強くなってきたと思います。
花火の撮影ってすごく難しいんです。引いて全体を映すと小さすぎ寄ると形がわからない。あれだけ大きな花火は画角になかなか入らないんです。でも今回は高精細度の4Kカメラで撮影し非常にクリアな映像が撮れました。特に三尺玉を下から見た映像は無人カメラを置いて撮影したので誰も見たことのない映像だと思います。
花火って一瞬で消えてしまうなかにどこか自分のこれまでを振り返らせるようなところがあると僕は感じています。世界中のどんな人の心も動かすエモーショナルさがあり、国境を越えると感じます。その美しさと迫力をぜひ劇場で楽しんでいただければと思います。
(取材/文・中村千晶)
※AERA 2024年7月1日号