著者は、日本民間放送連盟賞ラジオ報道番組部門で最優秀賞を受賞した朝日放送のラジオ番組「ダウン症は不幸ですか?」の構成作家。さらに取材を重ね、一般読者向けの本として上梓された。
 ダウン症と共に生きてきた5組の家族の人生が描かれている。健常者に比べればゆっくりな成長にかえって喜びを感じる家族、署名運動をして普通の小学校に通わせた家族、みんなから愛されたダウン症の娘を失ったあと、ダウン症の子どもを養子に迎えた家族などの話だ。
 ダウン症だからといって短命ではないこと。知的障害を伴う場合もあるが、会話できないわけではなく、むしろ、おしゃべり好きが多いこと。周囲を明るく楽しくしてくれるので、自然と人が集まってくることなど、あまり知られていない事実が、家族の普通の暮らしのようすとともに読者に伝えられる。
 このテーマを長年温めてきた著者は言う。「彼らの幸せな人生を知ることで、たとえ出生前診断の結果がダウン症でも、大切な命を諦めない人が一人でも増えてほしい」

週刊朝日 2016年1月15日号