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 医療保険料と合わせて徴収される子育て支援金。新たな国民負担への反発の声が上がる中、政府は実質負担ゼロと強弁する。本当にそんなことができるのだろうか。AERA 2024年6月24日号より。

【図を見る】「3.6兆円財源の内訳」はこちら

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 支援策の財源すべてを子育て支援金で調達しようとしているわけではない。政府は少子化対策を強化するため、年間3.6兆円程度の予算が必要になると試算。その捻出手段は、既定予算の最大活用(1.5兆円程度)、社会保障の歳出改革(1.1兆円程度)、子育て支援金制度(1兆円程度)と見積もっている。

 図版は政府作成のものをベースとした財源内訳の図解で、率直に言って理解しづらい。だが、この図からは直接的に見えてこないものの、かなり前向きな取り組みによって財源を捻出しようとする動きもあるという。

「1.1兆円程度の確保を見込む社会保障歳出改革においては、多くが高齢者のために使われている医療・介護費用の伸びを抑えることも盛り込まれています。この歳出削減で得られた分を子育て支援の拡充に回すことは、『全世代型社会保障』の流れにも沿っていると言えるでしょう」(ウェルス労務管理事務所代表・社会保険労務士の佐藤麻衣子さん)

 現在、後期高齢者の医療費の窓口負担は、実際にかかった医療費の1割(収入によっては2割または3割)。残りの医療費で、後期高齢者自身が保険料として支払っている分は約1割で、他は公費(5割)と後期高齢者支援金(4割)で賄っている。後期高齢者支援金とは、74歳以下であるすべての健康保険加入者が負担しているものだ。

 したがって、高齢者にかかっている医療・介護費用のムダを省くことは、74歳以下の世代の医療・介護保険料負担の軽減にもつながりうる。ただ、医療・介護費用の抑制に関し、具体的な目標値を掲げているわけではない。有言実行となっているか否か、国民はしっかりチェックしなければならないだろう。

個々でみると負担増も

 少子化対策は極めて重要な国策であるものの、子育て支援金という新たな国民負担への反発は根強い。しかも、支援金制度を創設しても「国民の実質負担はゼロ」だと説明しており、その根拠についての説明も不可解な内容だ。佐藤さんはこう述べる。

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