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昨秋、標準記録を突破したレースでは「前半、イメージしていたよりも、0秒1ほど遅かったんですが、そのおかげで後半に余力が残っていました」と振り返る。
ハードル種目は「障害」と書かれることもあるが、レース中に予期せぬことが起き、動揺を誘われることもある。
「抜き足の膝をぶつけ、そこから気持ちが荒ぶってしまい、冷静にレースを運べないこともありました。その意味ではメンタルも大切な種目ですし、これから経験値をより高めていきたいですね」
大学の途中まで、「将来は国を渡って仕事をするイメージでした」というが、いまは世界と勝負できるハードラーとしての期待が高まっている。慶應で過ごした間に、豊田の人生は大きく変わったのだ。
父の母国でもあるフランス。文化的にはその影響下で育ったこともあり、家族にとっても、パリで開催されるオリンピックに豊田が出場することには大きな意味がある。そして豊田自身がなにより楽しみにしている。
「より高いレベルで競技ができれば、それは自分の成長につながるはずです。出場できればの話ですが、フランス語のインタビューにもなんとか対応できると思います(笑)」
豊田兼は、アスリートの新しい可能性を我々に見せてくれるに違いない。(スポーツライター・生島淳)
※AERA 2024年6月24日号
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