もっともわかりやすい基準が「意匠的に優秀なもの」。デザインの質が高い建造物が選ばれる。東京駅丸ノ内本屋や旧東宮御所(迎賓館赤坂離宮)がそうだし、明治生命保険相互会社本社本館、築地本願寺本堂、戦後に建てられた代々木競技場などもその代表例だ。日本の文化・経済の中心である東京で、意匠や技術が卓越した建造物が多く重要文化財に指定されるのは必然なのかもしれない。とりわけ、明治以降の建造物は”この作品抜きに建築史は語れない”という物件が指定されているといえる。

「技術的に優秀なもの」は橋などの土木構造物に適用されることが多く、隅田川に架かる勝鬨(かちどき)橋などが該当する。

「歴史的価値の高いもの」は、「日本初」の本格的な社会教育施設としての博物館建築として重文指定された旧東京科学博物館本館のような例が多くを占める。ル・コルビュジエが設計した国立西洋美術館本館は”意匠的に優秀なもの”であると同時に、日本人建築家に大きな影響を与えた建築であることから”歴史的価値の高いもの”としても評価された。

旧久邇宮邸(聖心女子大学)御常御殿・小食堂。意匠的に優秀なものとしても評価されたが、現存例が少ない和風の皇室建築の研究に重要であることから、学術的価値も認められた(撮影/加藤史人)

 近年、適用例が少ないのは”学術的価値の高いもの”だが、旧久邇宮邸(聖心女子大学)御常御殿・小食堂などは、皇室建築の系譜を考える上での学術的価値が認められて指定されている。小林家住宅や旧永井家住宅など、民家に適用されるのが、”流派的又は地方的特色において顕著なもの”という指定基準。東京郊外の民家の様式を伝える点が評価されたものと言える。

(文 山内貴範 /生活・文化編集部)

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