明治生命保険相互会社本社本館。昭和に建てられた建築では、初めて重要文化財に指定された。岡田信一郎の最高傑作にして様式建築の到達点と評される、まさに飛び抜けて意匠的に優秀な建築である(撮影/山内貴範)
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 近年、京都や神戸などで開催されてきた、価値ある建築物を無料で公開するアートイベント。2024年5月末には東京で初めて、東京ステーションホテルや築地本願寺などを含む著名建築物を公開する「東京建築祭」が開かれ、6万5000人が来場。大盛況のうち終了した。テレビ番組でもたびたび建築に関する特集が組まれるなど、世は建築ブームだと言っていい。

 文化庁によると24年4月1日現在、日本国内には2574件の重要文化財建造物があり、うち231件が国宝建造物。東京には88件の重要文化財建造物があり、うち2件が国宝指定されているという。

 東京は交通網が発達しているため、公共交通機関を乗り継げば1日でかなりの数の文化財建築物を見て歩くことができる。丸の内周辺を一日歩けば、1日平均約35万人(2022年度)の乗車人員数を誇る「東京駅」や、戦後、日本の占領政策について連合国が理事会を開いた「明治安田生命保険相互会社本社本館」、日本の道路の起点である「日本橋」、百貨店建築発展の象徴「三越日本橋本店」など、バラエティーに富んだ数多の文化財建築を鑑賞できる。

 だが、「重要文化財や国宝がどんな基準で指定されているのか」は意外に知られていない。6月7日に発売されたばかりの『TOKYO名建築案内』(監修 米山勇/著 山内貴範)から、抜粋して解説したい。

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 現在の国宝・重要文化財は、1949(昭和24)年の法隆寺金堂壁画の焼損を機に、翌年施行された文化財保護法のもとで指定されている。施行後、戦前の国宝保存法のもとで”国宝”に指定された文化財はすべて”重要文化財”となり、そのなかから新たに国宝が選び直されている。旧東宮御所(迎賓館赤坂離宮)のような例外もあるが、基本的には、国宝に指定されるには、重要文化財に指定されている必要があるのだ。

文化庁が定める国宝・重要文化財(建築物)の指定基準

 建造物の指定基準は上記の表に掲げた5つがあり、学術調査の結果、どれかに該当すると判定されれば指定される資格を有することになる。そして、そのなかから極めて優秀かつ、文化史的意義の特に深いものが国宝になるというわけだ。

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