そういえば、お祓いの時。

 “霊媒師”は最初、左手に袋を持ち、右手だけでお祓いをしていた。しかし、途中で、案内をしてくれた女性に袋を渡し、両手を使ったお祓いに切り替えたようだった。その時に袋が別の袋とすり替えられたのでは?

 フライト時間が近づいていたため、Aさんは警察で相談するのはあきらめた。台湾に戻った後、日本在住の台湾人の知人に一部始終を説明し、その知人宛に問題の黒っぽい袋と塩、数珠を送った。日本の警察に相談するよう依頼したというが、まだ連絡はない。

「現金、指輪を盗まれたことも悲しいですが、親切心を装って騙すというのは本当に汚い」

 Aさんは怒りを隠せない。

よく似た手口の4人組を逮捕

 大阪府警は中国人男女4人を窃盗容疑で逮捕した。捜査関係者によると、4人は声かけ勧誘役、霊媒師役などと分担を決め、チームプレーを発揮していた。その手口がAさんの被害と似ている。

 逮捕容疑によると、事件が起きたのは5月9日。現場は名古屋市の商店街だった。中国語で被害者に声をかけ、被害者が中国語を話すことがわかると、「行きたい場所に案内しますよ」と案内を買って出た。会話のなかで、被害者の出身や家族、悩み事などを聞き出し、待機している霊媒師役にSNSで連絡。目的地に現れた霊媒師役はあたかも超能力があるかのように装い、被害者の個人情報を言い当てたという。

「あなたの家族は死ぬかもしれない」

 4人は被害者に現金や貴金属を自宅に取りに帰らせ、袋に詰めてお祓いをした。被害者の隙をみて袋をすり替え、現金10万円、貴金属など約30万円相当を盗んだ疑いがあるという。

 府警は防犯カメラの映像などの元に、このグループにたどりついた。ホテルや出国しようとした関西国際空港で身柄を確保したという。こうしたグループが複数存在する可能性もあり、Aさんの被害との関係は定かではない。

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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