大阪府警本部
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 道端で言葉巧みに話しかけられ、「お祓いをしなければ不幸になる」などと不安を煽られた挙句、現金や貴金属を盗み取られてしまう被害が各地で相次いでいる。大阪府警は名古屋市で起きた事件で4人の中国籍の男女を逮捕したが、全国で30件、総額1億2000万円の同種被害を把握しているという。共通するのは「霊媒師」の存在。AERAdot.記者はまさにこの犯罪の被害に遭ったという女性から、その鮮やかな手口の詳細を聞いた。

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「名古屋の事件をインターネットのニュースで知りました。私が騙された手口とそっくりです」

 被害を訴えるのは台湾人女性のAさん。今年1月末から2月にかけて約2週間の日程で、大阪や京都、神戸を観光で訪れた。

 大阪・梅田の商店街を歩いていた時だった。

「あなた中国語ができますか」

 60歳 くらいの女性に話しかけられた。Aさんはスマートフォンで近くにある神社を探していたところだった。親切そうなその女性に尋ねてみた。

「この神社、どのあたりでしょう?」

「知っていますよ、私もその近くに用事があるので、一緒に連れて行ってあげますよ」

 女性に導かれ、Aさんは歩き出した。女性はさかんにAさんの家庭のことを尋ねた。

「家族は?」

「どんな仕事?」

「困っていること、悩みはある?」

 Aさんは、生年月日や海に近い生まれ故郷、親が病気で入院していること、夫の商売、工場経営が芳しくないことなどを話した。15分ほどで神社の近くに着いた。女性は言った。

「せっかくだから、いい人を紹介します。この人に相談しなさいよ」
 

生まれた日まで⁉

 まもなく50歳過ぎと思われる女性が現れた。

 霊媒師だという。

「あなたの親、入院したでしょう」

「旦那さんの工場の業績がよくないのではない?」

 そして、Aさんの生年月日まで口にして、

「海の近くで生まれ育ったのではない? 霊視をすると、あなたや家族のすべてが見える」

 すべてを言い当てられ、Aさんはすっかり驚いてしまった。

「生まれた日までわかる、これが超能力だ、すごい」

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今西憲之

今西憲之

大阪府生まれのジャーナリスト。大阪を拠点に週刊誌や月刊誌の取材を手がける。「週刊朝日」記者歴は30年以上。政治、社会などを中心にジャンルを問わず広くニュースを発信する。

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”霊媒師”がお祓いすると言ったモノは