「救急車を有料化するとはどういうことか」という市民の声も寄せられた。画像はイメージ(GettyImages)
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 救急医療の逼迫(ひっぱく)を改善するため、三重県松阪市の基幹3病院が今月、救急車で運ばれたが入院しなかった患者から、7700円の徴収を始めた。市には賛否の声が寄せられているが、「救急車を有料化するな」といった勘違いに基づく批判も少なくないという。市に真意を聞くとともに、救急医療の専門家に7700円徴収の“功罪”を尋ねた。

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 3つの病院は、済生会松阪総合病院、松阪中央総合病院、松阪市民病院で、24時間体制で入院や手術が必要な重症患者を受け入れる「二次救急」を行っている。

 市の担当者によると、徴収の対象となるのは救急搬送されたが入院しなかった患者のうち、医師が「緊急性がなかった」と判断した場合で、保険適用外の「選定療養費」として7700円を徴収する。病院側の判断によっては、入院しなくても徴収されない可能性がある。

 そもそも選定療養費とは、200床以上の病院を紹介状なしで受診する場合に病院が徴収するもので、2016年4月の健康保険法改正で義務化された。

 救急搬送の患者も、紹介状がない場合は選定療養費の対象になっている。だが、緊急時に紹介状をもらうのは現実的に難しい場合が多く、救急搬送については徴収の判断は病院側に委ねられているのが現状だ。徴収しない方針の病院もあれば、入院が必要などの条件を満たさない場合は選定療養費の対象になることを明示し、徴収している病院も複数ある。

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國府田英之

國府田英之

1976年生まれ。全国紙の記者を経て2010年からフリーランスに。週刊誌記者やポータルサイトのニュースデスクなどを転々とする。家族の介護で離職し、しばらく無職で過ごしたのち20年秋からAERAdot.記者に。テーマは「社会」。どんなできごとも社会です。

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市民の批判には多くの「誤解」も