「虎に翼」には働く女性の「今」が詰まっている/NHKの番組公式サイトから
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 朝ドラ「虎に翼」が前半を終えた。1914(大正3)年生まれの三淵嘉子がモデルなのにすべてが「今」だから、全く目が離せない。コシノ3姉妹の母(1913年生まれ)がヒロイン・糸子のモデルだった「カーネーション」(2011年度後期)以来だと思う。

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 「虎に翼」はシスターフッドの物語だ。シスターフッドに弱い私は、しょっちゅう泣いている。「カーネーション」にもシスターフッドは描かれた(泣いた)。だが、二つのシスターフッドはかなり違う。「カーネーション」のそれがヒロインの度量を表すものだったのに対し、「虎に翼」のそれは怒りとセットだ。女性の不平等すぎる現実への怒り。それでも前へ進むためのシスターフッド。それがこれでもかとばかり描かれている。

 糸子は今日的な表現をするなら起業家(洋装店店主)だった。寅子(伊藤沙莉)は既存の組織に挑む人だ。挑んだ法曹界も、それ以前に法律も「男性がえらいです。以上終わり」の世界だ。己の度量だけではどうにもならない理不尽さ、それへの怒りがベースにあるから、「虎に翼」のシスターフッドは迫力がある。これはおまえの話なのだと、迫ってくる。

 ここからは、よね(土居志央梨)と寅子の話をする。明律大学女子部法科の同級生だが、まるで違う。寅子は帝都銀行勤務の父のもと、お茶の水にある女学校を2番の成績で卒業、男性を「殿方」と呼ぶ。よねは農家の次女で、女郎屋に売られそうになり逃げてきてカフェで働く。「私は女はやめた」と「ボーイ」になった。そんな2人をつなげたものは法律で、寅子とよねは無二の親友になる――というのは嘘で、「虎に翼」はそれほど単純でない。

5月31日の放送回で寅子は司法省の門を叩いた。戦争が終わり、日本国憲法が公布される。国民の「法の下の平等」が明記された第14条に励まされ、人事課長を訪ねるのだ。名前、そして「昭和13年度高等試験司法科合格」を告げ、「私を裁判官として採用してください」と言う。6月から寅子は、三淵がたどった「日本初の女性裁判所長」への道を歩む、その号砲だった。

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「空襲で亡くなったそうですよ」