仕事に意欲がある女性が管理職になっても、会社を去るケースは少なくない。なぜ女性たちは辞めるのか。退職を防ぐにはどうしたらいいのか。AERA 2024年6月10日号より。
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政府は、2030年までに女性役員比率を30%以上に増やすという目標を掲げている。ただ、男女共同参画白書(令和5年版)によると、22年の管理的職業従事者に占める女性の割合は12.9%にとどまる。就業者に占める女性の割合は45.0%と半数近いが、役職が上がるにつれて女性は少なくなるのが現状だ。一方、就業者に占める女性の割合が40~45%前後のスウェーデンや米国、シンガポールでは管理的職業従事者に占める女性の割合は30~40%台だ。
編著『なぜ女性管理職は少ないのか』がある大沢真知子・日本女子大学名誉教授は、こう指摘する。
「女性は『管理職になりたがらない』と言われがちだが、問題は日本の組織が(性別役割分担を前提にした)男性優先の昇進の仕組みを作っていることだ。その仕組みが残ったまま女性管理職を誕生させようとしても、現状が大幅に変わることはない」
キャリアを潰される
日本では、男性は家事や育児を妻に任せて仕事を優先させるのが当然とする考え方が長らく続いてきた。
「組織を優先させる人を高く評価すると、それができない人は組織に居づらくなる。組織優先の考え方は偏見ということを理解しないと、女性管理職が実力を発揮できる環境を作れない。子育て中の女性管理職の中には、理解されない中で孤独を感じながら状況を受け入れる人もいるが、『いまは子どもが大切』と退職していく人がいるのは当然だろう」(大沢名誉教授)
マスコミで管理職を経験後に退職した40代の女性も「男性ばかりの縦社会」に違和感を覚えた一人だ。
周囲の管理職は男性が多く、男性のコミュニティーの中だけで情報がめぐっているように感じたという。働き方や仕事のルールなどについての変更を男性上司に提案すると、「分かっているけど、変えるのは大変なんだよね」という言葉で終わってしまい、議論が進まないことも何度かあった。