中間管理職だったので権限は小さいのに、勤務時間は長い。自分の時間とエネルギーが吸い取られるような「不毛な忙しさ」が続き、「おじさんたちのアップデートをしているうちに自分のキャリアが潰されていく」と思うように。もっと役職が上がればその状況を変えられたのかもしれないが、社内を見回しても昇進していく女性は少なく、会社の方針を決める重要ポストに女性はほぼいない。「それまで心がもたない」と感じ、悩んだ末に退職を決めたという。女性は当時をこう振り返る。
「都合が良いところに『わきまえている』女性を置き、大事なところはボーイズクラブで固める。この先も変わらないんだろうな、と思った」
「わきまえる女性」
AERAが昨年12月にインターネット上で「女性管理職のホンネ」と題して行ったアンケートでも「男性社会」で苦労する女性管理職の姿が浮かび上がった。
「前職の管理職は全員男性で、奥さんは専業主婦。ハードに働いている人だけが管理職になっていた印象があり、その価値観の男性管理職と評価を比較されてしまうというプレッシャーはあったかと思います」(情報サービス、課長級、43歳)
「ビジネスの現場が、男性主体で時間の制約なく、会社のために人生を捧げることができる価値観で形成されてきて、制度や仕組みもそれをベースにしたものになっている」(教育・学習支援、部長級、52歳)
「女性が管理職になるには、男性が管理職になるよりもさらに周りへの気配り、コミュニケーション能力が求められます。ガラスの天井とはよく言ったもんで、会議などで男性の役職たちに疎まれず、めんどくさいやつだと思われず、でも役立たずとも思われないよう、的確な発言をするのに毎回とても緊張しています」(運輸、係長級、52歳)
なぜ、こんなにも女性たちは苦悩するのか。
21年2月には、東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の会長(当時)、森喜朗氏が同委員会の女性たちについて「みなさん、わきまえておられて」と発言して問題になったが「日本では『意見を言う女性は女性らしくない』という価値観が家庭や学校など社会全体で作られてきた」(大沢名誉教授)からなのだろう。