今シーズン早々と休養となった西武・松井稼頭央監督
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 セ・パ交流戦に突入した今年のプロ野球。セ・リーグは混戦が続いているが、パ・リーグは上位と下位の差が既にかなり開いた印象は否めない。中でも苦しい戦いが続いているのが西武だ。4月には7連敗、5月にも8連敗を喫するなど開幕から低迷。5月26日には松井稼頭央監督の休養が発表され、交流戦からは渡辺久信ゼネラル・マネージャー(GM)が監督代行として指揮を執ることになったのだ。

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 これまでも成績不振を理由に監督が休養という形で退くことは多かったが、5月というのは異例の早さである。では過去にシーズン途中で監督、もしくは監督代行となった指揮官がチームを立て直したケースはどれくらいあるのだろうか。

 まず真っ先に名前が挙がるのが古葉竹識(広島など)だ。1975年、広島がメジャーで監督経験もあるルーツ監督を招聘したものの、わずか15試合で帰国すると、コーチから昇格する形で39歳の若さで監督に就任(ルーツ監督が退直後の4試合は野崎泰一が監督代行を務めている)。するとそこからチームは快進撃を続け、球団創設初となるリーグ優勝を果たしたのだ。前年まで3年連続で最下位だったことを考えると、驚きの躍進ぶりと言えるだろう。ちなみにチームはこの年からヘルメットを赤色に変更しており、カープと言えば“赤ヘル”という印象が一気に定着した。その後も長く監督を務め、リーグ優勝4回、日本一3回を達成。チームの黄金時代を築いている。

 近年最も成功した例としては、現在もオリックスの指揮を執る中嶋聡監督が挙げられるだろう。2020年の8月20日にチームが最下位に低迷している責任をとって西村徳文監督が辞任すると、二軍監督から昇格する形で監督代行に就任。その年はシーズン終盤ということもあって順位を押し上げることはできなかったが、自身の監督代行就任と同時に杉本裕太郎を一軍に昇格させ、他の若手も引き上げたことが評価されて翌2021年からは正式に監督に就任。すると抜擢した杉本がいきなりホームラン王に輝くなど、多くの選手が才能を開花させ、前年の最下位からチームをリーグ優勝に導いて見せたのだ。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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セ・リーグで近年成功した代行監督は?