“紫の貴公子”“異能の天才”“変態”……様々な形容をこれまで見てきたが、「孤高の」という言葉がこれほど似合うアーティストは、いない。1978年のデビュー以来、現在もなお精力的な活動を続けるプリンス。その音楽は、R&Bやファンク、ロックといったカテゴリーを飛び越え、“プリンス”というジャンルをつくりあげたといわれることもある。
 プリンスを師と仰ぎ、自身も音楽家である著者ならではの視点から、プリンス・ミュージックがいかに形成されたか、“革新的”と評されることの多いプリンスの革新性がひもとかれていく。
 マイケル・ジャクソンについての著作もある著者らしく、「ビリー・ジーン」や「BAD」などベースラインが印象的な曲が代表曲のマイケルと、「ビートに抱かれて」「KISS」など、ベースレスなのに踊れるビートを刻む曲で全米1位を獲得したプリンスとの対比も興味深い。
 その不思議な魅力は、読後にますます深みを増した。プリンスの音楽、プリンスという存在は、これからも孤高だ、たぶん。

週刊朝日 2015年12月25日号