話は少し逸れますが、観客側が求める「一体感」「参加意識」さらには「全体主義気質」を逆手に取って遊んでいたのが、かつて「笑っていいとも!」で司会をされていたタモリさんです。

  一連の「暑いですねー」「そーですねー」や「それではお友達の紹介を……」「えぇぇぇぇぇ!」は、日本人独特の集団気質を皮肉り、若干馬鹿にし、巧みに凝縮させたサンプルにほかなりません。しかし、あのシニカルな悪ふざけを、健全な芸能鑑賞法(もしくは芸能の見せ方・作り方)だと信じている人たちが、今は主流になりつつあります。それだけ純粋で平等な世の中になった証拠なのかもしれません。
 

  無論、何度も書いている通り、日本人の「全体主義気質」は尊いものです。

  エンタメにおける消費者側の「参加意識」も、今や大事なビジネスファクターです。

 必要なのは、演者側がどれだけオーディエンスに頼り、期待するかの「線引き」を徹底できるかだと思います。「一体感」がなくても、満足してもらえる出し物を見せられるか。たとえ座ったままでも、体と心の高揚感を与えられるか。

「こっち(ステージ)は非現実、あちら(客席)は現実。非現実を見せて、観客を少しでも現実から遠ざけるのがステージに立つ者の務め。どんなに振り付けを煽ろうと、最終的に演(や)る側と観る側が一体になることはない」

 これは、奇しくも先日、突然旅立ってしまった愛すべき姐御・真島茂樹さんがいつか話してくださったことです。
 

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ミッツ・マングローブ

ミッツ・マングローブ

ミッツ・マングローブ/1975年、横浜市生まれ。慶應義塾大学卒業後、英国留学を経て2000年にドラァグクイーンとしてデビュー。現在「スポーツ酒場~語り亭~」「5時に夢中!」などのテレビ番組に出演中。音楽ユニット「星屑スキャット」としても活動する

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