ドラァグクイーンとしてデビューし、テレビなどで活躍中のミッツ・マングローブさんの連載「今週のお務め」。34回目のテーマは「参加・参戦型のエンタメ」について。
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前回は音楽ライブ・コンサートにおける日本人の「ノリ」についてあれこれ書かせて頂きました。星野源さんがフェスに出演された際に発した「(オーディエンスへの)提案」の記事を読んだのがきっかけで、ほぼ私の持論を展開したまでで、「星野源関連の記事?」と色めき立った星野源さんの御贔屓様たちには、やや肩透かしだったかもしれません。
しかも、日頃から「テレビやラジオの発言を切り取って記事にするネット媒体のさもしさ」を嘆いていた私としたことが、気付けばネット記事の切り取りみたいなことをしてしまい、まったくお恥ずかしい限り。
星野さんの本意とは違う形で、この話を独り歩きさせてしまったかもしれませんが、星野さんの提案は、改めて「ステージとオーディエンス」の関係性を考える上でも、大変良いきっかけになったと思います。星野さん的には今はそれどころではないとは思いますが。どうかご自愛専一に。
日本人(もしくはアジア人)の中に今も色濃く残る「全体主義」の気質。これが西洋の音楽やエンターテインメントと対峙した時、やたらと一体感を帯びた妙なグルーヴを醸す。個より集団の秩序を重んじる美意識は、日本ならではの良さでもある一方で、そこを打破したいと感じている個々は少なくないはず……というのが前回の概要です。
オールスタンディング、曲中のコール・アンド・レスポンス、さらには統一された客席の動き込みの演出などは、日本に限らず世界中のライブ・コンサートで見られる光景です。
何より今のオーディエンスが求めているのは「一体感」。要は、「客も参加意識を持てるコンサート」が主流であり、その「実感」を煽り与えることも演者側のミッションになりつつあるわけです。