作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は蓮舫さんが立候補を表明した東京都知事選について。
【写真多数】蓮舫氏が語った都知事に挑戦する意味、14年前の白ジャケット姿も
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東京都知事選、蓮舫さんと小池百合子さんの事実上の一騎打ちになるのだろうか。
都知事3選を目指すとみられる小池百合子さんと互角で戦えるのは、知名度でいえば蓮舫さんしかいないのだろうな……と思いつつ、なぜだろう、ワクワクしない。都知事選史上初の大物女性候補者どうしの対立となれば面白いに決まっているのに、心は無風、凪、である。選挙のある夏までには気分は盛り上がるだろうか。
思い返せば私が一番ワクワクした都知事選は、2003年の石原慎太郎VS.樋口恵子の戦いだった。もう21年も前のことだが、あのとき樋口さんは、“この選挙は「軍国じいさん」と「平和ボケおばさん」の戦いだ!”と、70歳で政治の世界に飛び込む決意をしたのだ。まさにマッチョ政治とオバサンの対立だった。
選挙の素人だった樋口さんを選挙の素人の女性たちが熱心に支えたのを、私は遠巻きに見ていた。樋口さんの演説を聞きたくてわざわざ出向いたこともある。結果は石原さんの300万票で圧勝であったけれど、樋口さんは80万票も取り、そのうちの一票が自分のものであることに誇りを感じた。夢を見させてもらったのだと思う。70歳の女性が地方選挙に立ち、選挙に素人の女性たちが手弁当で応援し、選挙を盛り上げていく。選挙のあり方も含め、私はこういう政治を求めているのだと思えた。
私は今の都知事を支持しないが、小池さんが有権者をワクワクさせてきた人であることは確かだ。小池さんが初めて都知事に立候補したとき、緑をイメージカラーにする小池さんの周りには、野菜を持って「百合ちゃ〜ん」と熱狂する高齢の女性たちの姿があった。「自民党に真っ向から狼煙をあげる」というような物語は、やっぱり格好良く見えたし、女たちをワクワクさせるだけの時代の空気があった。
ワクワクの賞味期限はさすがに今は切れたように見えるが、選挙は水モノである。何が起きるかわからない怖さが小池さんにはある。