遠方から単身赴任で護衛、心臓の弱い娘を残して死亡
護衛4人は、遠くから派遣された警察官たちだった。警備4年目の護衛ジュマ・グル(32)は、カブールの自宅を離れ、単身赴任で中村医師を守っていた。生まれつき心臓が弱い娘マルワ(3)の薬代は月2500アフガニ(約3500円)。ジュマ・グルの月給1万8400アフガニ(約2万6千円)が支えだった。事件後、現地政府は遺族支援として1家族あたり10万アフガニ(約14万円)を支給したが、半年もすれば底をつくと妻ビルキス(22)は嘆いていた。
最年少の護衛のサイード・ラヒム(26)は、妻子7人を残して亡くなった。ナンガルハル州の貧しい山村に生まれ、警察官だった兄も爆発事件で殉職しているという。教育を受けることができなかったサイード・ラヒムは、命の危険と引き換えに給料をもらうしかない一家の境遇を悔やみ、せめて「子どもたちは学校に通わせたい」と父親に話していたという。同じ山村出身の護衛アブドゥル・クドゥス(27)は一家の唯一の稼ぎ手だったが、溺愛する娘ナスリン(1)を残して死亡した。
カブール出身のマンドザイ(36)は、護衛のリーダーだった。本来であれば事務所に詰めて遠隔で指示する役回りだったが「座っていてはドクター・ナカムラを守れない」と現場に出ていた。妻ナフィサ(34)に電話で「子どもを頼む」と告げた翌朝、事件は起きた。(文中一部敬称略)(朝日新聞記者・乗京真知)
※AERA 2024年6月3日号より抜粋