俳優・モデル 杏 (c)2024「かくしごと」製作委員会
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 妖怪役など、思いもよらない役柄をオファーされることがあるという杏さん。映画「かくしごと」で演じる母親役など「こんな役が自分に」という驚きと面白さがあると語った。AERA 2024年6月4日号より。

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「芯の強さとしなやかさがあって、素晴らしいよね」

 表紙の撮影を終えたフォトグラファーの蜷川実花は、開口一番そう口にした。二人は旧知の仲。久しぶりの再会となったこの日も、ハイタッチで撮影を終えた。前回、AERAの表紙に登場したのは2016年。初めての出産から1年も経っていない頃だった。

 22年に3人の子どもたちとパリと日本の2拠点生活を始め、リモート打ち合わせなどをこなしながら、俳優、モデルとして活動を続ける。主演映画「かくしごと」で演じるのは、記憶喪失の少年に自分は母親であると告げ、育てていく女性・千紗子。その行動は一般には理解されないかもしれない。オファーを受け、大切にしたのは「やってみたい」という感情だった。

「きっと自分だったら、リスクを背負ったり、法を犯したりすることはできない。それをやってのけてしまうのが千紗子であり、映画だから体験できること。『こういう役をやりたい』という想いが先行することは意外となく、逆に想像したこともないような役柄のオファーをいただくこともある。粛々と、鍛錬を積んでいく、という感覚です」

 年齢を重ね、座長としての役回りも増えてきた。昔の自分からの変化を感じることもあるという。

「今回の一時帰国でも、職業の異なる同級生たちと会い、いい意味で“おばちゃんパワー”が使えるようになったよね、という話をしていたんです。言葉を変えると『丸くなり、笑顔で回せるようになった』というか。20代の頃の自分は、もう少し“角”があった気がします。でも、ぶつかるより笑顔で乗りきった方が気持ちよく過ごせますし、そうした姿勢は撮影現場などでも表れるのかな、と」

 蜷川がカメラ越しに見た「しなやかさ」は、発する言葉の端々からも感じられた。(ライター・古谷ゆう子)

AERA 2024年6月3日号より

AERA 2024年6月3日号