4月に行われた衆院東京15区補選で、他陣営の選挙の妨害をしたとして、政治団体「つばさの党」の幹部3人が逮捕された。長年選挙の現場を取材している畠山理仁さんと、選挙プランナーの松田馨さんが事件について語り合った。AERA 2024年6月3日号より。
* * *
松田:選挙プランナーとしては、逮捕されてホッとしたというのがあります。映像で確認し、現場にいた方のお話も聞いた上で、「選挙の自由妨害罪」が成立するだろうと思っていました。過去の判例から考えれば有罪になり得る事案ですから、きちんと現行法の中で取り締まりが行われて良かったです。
畠山:つばさの党は別陣営の候補者の演説へ行き、有権者に聞こえないほどの音量で「質問をしにいく」という選挙運動でした。切れ目なく大声を上げるので、他の候補者はまともに選挙演説ができませんでしたし、演説を聞きたい有権者も聞けない状態。本来、街頭演説とは候補者の主張を聞き、有権者が誰に投票するかを判断するためのものです。自分たちの権利を主張したいんだったら、もう少し違うやり方があったのではないかとは思います。
松田:今後、裁判の行方を見ないといけませんが、特別捜査本部も作られたので、徹底的に捜査されるでしょう。
畠山:なぜ妨害行為をしたかというと、街角で真面目に話をしても誰も聞かず、聞いてもらうためにはまず存在を知ってもらう必要があると。迷惑になることを自覚しながらも、注目を集めないといけないなどと主張していました。
松田:それは、選挙妨害した理由を、有権者のせいにしているように受け取れますね。そもそも街頭演説は聞いてもらえないのが当たり前で、つばさの党に限らず、無所属の人や新人候補者はもちろん、自民や立憲の候補者ですら、全く人がいないところで演説をしている人はいくらでもいますよ。
有権者の権利が奪われた、根底に根強いマスコミ不信
畠山:候補者は自由に選挙運動をする権利はありますが、今回のつばさの党は、自分たちの権利だけを主張して、相手の自由を尊重しないということが非常に大きな問題でした。
松田:そうですね。彼らは「候補者」であるから、自分たちの行為は違法でないと主張もしていました。確かに街頭演説の標旗を掲げれば、どこでも演説をする権利は認められています。でもその一方で、他者の演説を妨害することは違反であると、公職選挙法(公選法)で定められていますから。