中国への異常なまでの嫌悪感

 サウジだけではない。例えば、ミャンマーは、前述の自由度ランキングでサウジと同じ183位、報道の自由度ランキングでも171位で中国とほぼ同じ。このミャンマーに対しては、米国やEUも制裁を課しているが、日本政府は何もしていない。

 私は、中国を擁護したいのではない。

 もし、中国を批判し、中国との貿易関係などに制限を加えるなら、サウジやミャンマーにも同じような対応を行うべきではないのかということを言いたいのだ。

 日本の国民は、米国や日本政府がこうしたダブルスタンダードに基づく外交を進めていることを知らないまま、中国に対して異常なまでに嫌悪感を強め、あろうことか、中国との戦争の準備を進めるのも仕方ないなどと考えるようになっている。

 日本政府は、米国とともに、中国は他の国と比べて「とんでもなく」悪い国だから仲良くすべきではないという評価をまず広めて、国民感情を嫌中に染め上げるのに成功した。その強い嫌中感情という基盤の上で、中国は台湾を攻撃するかもしれない、その次は日本だと言えば、どうなるか。

 国民は、それなら万一に備えて戦う準備をした方が良いという方向に傾く。

 深刻なことに、メディアもそれを助長するような報道を続けている。

 仮に、日本政府が中国には問題があるが、それはサウジと同程度だから、サウジと同じように対応すれば良いと言えば、どうなるだろうか。少なくとも現在のように強烈な嫌中感情が広まることはないはずだ。

 そうなれば、政府が、中国が危ないと叫んでも、もう少し冷静に物事を判断する余裕が国民の中に生まれるだろう。

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国民の反中感情を煽っている