報道の自由度が低いサウジと中国
そこで、二つの代表的な指標を使って、サウジの状況を中国と比較してみよう。
まず、前述の本コラムでも紹介した国境なき記者団による報道の自由度ランキング(24年)だが、中国は172位だ。日本が70位だから相当低いと言って良いだろう。
では、サウジはどうかといえば、166位で中国とほぼ並んでいる。中国に報道の自由がないと言うのであれば、サウジにもないと言うべきだろう。
次に、Freedom House の世界の自由度報告書「Freedom in the World」による自由度ランキング(24年)をみると、確かに、中国はこちらでも低く、181位9点である。
しかし、皆さんには意外かもしれないが、サウジはさらに低く、183位8点となっていて、世界でも極めて悪い状況だ。
そこで疑問が湧いてくる。
中国に対しては、米国は深刻な人権問題があるとか報道の弾圧があるなどと酷評し、制裁まで加えている。それとともに、中国は危ない国だという風評を世界に広げ、世界の国々に中国と付き合わないようにと促しているのだ。
一方、人権重視の外交を展開し、中国を激しく批判する米国は、国家情報長官室がサウジの皇太子が殺人を承認したと断定しているにもかかわらず、また、EU諸国や世界の人権団体が強く問題を指摘しているにもかかわらず、サウジとの間で、積極的に貿易や経済協力を展開している。いかにも矛盾した態度ではないか。
そして、日本政府は米国隷従なので、中国は非民主的で価値観が違うとことさらに宣伝してほとんど対話のチャネルを閉じたまま、その一方で、サウジに一言の苦言を呈することもなくニコニコと笑顔を振りまきながら、関係を強化しようとしている。