産業が興り、労働者が集まれば、自然と色街は形成される。色街の存在は街の活気の副産物であり、栄える都市には濃度の差はあっても、痕跡が必ずある。非合法の売春地帯である「青線」はその最たる存在だろう。
 報道カメラマンの著者は北海道から沖縄まで全国の青線を2001年から巡った。すでに旧観を失った街の栄枯盛衰や、沖縄や札幌のようについ最近まで欲望に満ち溢れていた色街の生き死にを本書では描く。かつて青線と呼ばれた街が役割を終えたことを自覚しつつも、行き場がなく、そこに留まるしかない諦念が、働く女性や関係者の発言からは透けて見える。
 15年現在、本書で取り扱う青線地帯は浄化活動の波にさらされ、全国から消えつつある。営業はしていないものの、大半の街並みはそのままで、商店街としても住宅地としても街を再形成できずにいたずらに時を重ねる。街の現在の写真が盛時の猥雑な雰囲気を想像させる一方、現代から取り残された寂しさを見事に切り取っている。

週刊朝日 2015年12月18日号

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