どうですか、あなたが求めているのは彼との燃えるような愛の時間なのか、あるいは既婚男性とのハードル低めの恋愛で得られる安易な自信みたいなものなのか、思い当たる節はありますか。

不倫には二種類ある

 もし本当に彼があなたにとって運命の愛すべき相手で、タイミング的に愛し合ったのは彼が結婚した後だったけれども、今後もその愛を貫き通したいほど愛し尊敬する対象であるならば、それを貫いてもいいとは思います。不倫中というのは私からすると二種類あります。自分が既婚であるか、未婚であるか。前者は結婚という制度に自ら乗っかっておきながらそれをふいにするわけですからやや矛盾していますが、後者ははなから結婚制度を是としないという人もいるわけだから、倫理的にはそんなに罪が重いと個人的には思いません。

 ただ、もしあなたがその恋愛で得たいものが自分自身の価値を実感する契機のようなものであるなら、それをわざわざ誰かしらの身体と時間を使い、誰かしらが非常に不快になる行為を通して得るというのはあまりスマートなやり方ではないのではないでしょうか。整形でも散財でもスキルアップでも風俗バイトでもインスタグラマーでも、自分に自信を持つ行為というのはその人のコンプレックスや自尊心の在り方によって色々ありますから、不倫以外にその機会を設けたほうがいい気がします。

 今の恋愛であなたが少し自分に自信が持てたり、孤独を紛らわせたり、ちょっと自分の価値が上がる気がしたりしている間に、ただでさえ家庭を持って幸福なはずの男が、余暇をより充実した刺激的なものにして超お得に楽しみを得ているとしたら、それはそれで気に食わないというか、なんか腹が立つじゃないですか。

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鈴木涼美

鈴木涼美

1983年、東京都生まれ。慶應義塾大学在学中にAV女優としてデビューし、キャバクラなどで働きつつ、東京大学大学院修士課程を修了。日本経済新聞社で5年半勤務した後、フリーの文筆家に転身。恋愛コラムやエッセイなど活躍の幅を広げる中、小説第一作の『ギフテッド』、第二作の『グレイスレス』は、芥川賞候補に選出された。著書に、『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』『非・絶滅男女図鑑 男はホントに話を聞かないし、女も頑固に地図は読まない』など。近著は、源氏物語を題材にした小説『YUKARI』

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