国名が数年前に変更された国の選手が、おふたりの前を行進していた。
「マイクの音声が割れて、紹介された国名はひどく聞き取りづらい状況でした。皇太子さま(当時)は、雅子さまに何かたずねていらっしゃった。妃殿下は、皇太子さまの耳に、お顔を近づけて、ご説明をされていたご様子でした。外務省でキャリアを積んでおられた妃殿下を信頼なさっているのだなと感じました」
当時、ご一家に仕えていた職員も何度となく、こう話していた。
「皇太子ご一家は、空気が明るい。なんといっても、皇太子さまが妃殿下をお好きでいらっしゃるのだと、われわれにも伝わります」
また、おふたりのそばにいる機会のあった人物も「非常に仲がいいご夫婦」と、ほほえましいエピソードを話してくれたことがある。
公務でお出かけの際などもごく自然体で、おふたりの会話が周囲に聞こえることが珍しくない。雅子さまは、皇太子さまに、
「――だよね」
そうくだけた空気で話しかけ、皇太子さまも「うん、うん」といったふうに応じていたという。
昭和から平成にかけて宮内庁にいた人物は、昭和そして平成の天皇と皇后の間には、相手を尊重しつつも「ある種の緊張感が保たれていた」と振り返る。
「いまの令和の両陛下は、こうした空気を大きく変えました。特に、即位してからの数年は、世間はどうしても前代の皇室と比較してしまうものです。しかし、その比較が平成の皇后バッシングを生み、皇室を追い詰めてしまった。
時代に合った皇室の在りように正解はありません。コロナ禍や経済の停滞に国民が苦しんだいまの日本にとっては、天皇陛下と皇后雅子さまの、笑い声と明るい空気感は、ある種の救いになっているのではないでしょうか」
(AERA dot.編集部・永井貴子)