エースの高橋光成が出遅れたのは誤算だった

休日の試合でもスタンドに目立つ空席

 ふがいない戦いぶりに、西武ファンが球場から離れている。本拠地ベルーナドームで開催された11、12日の楽天戦は土日にも関わらず、来場者が1万9482人、1万9185人。3万1552人収容の球場は空席が目立った。

 観戦に訪れた西武ファンの40代男性はこう訴える。
「勝てないからではなく、どういうチームを作るかというビジョンが見えてこないから客足が遠のいているんじゃないですかね。例えば日本ハムは新庄監督が万波中正、野村佑希を打撃不振でも我慢強く起用していた。でも、松井監督はこの選手を育ててチームの核にするという意図が見えてこない。辻発彦前監督の時は魅力的なチーム作りをしていたので比べてしまいますよね」

 辻前監督が就任したのは17年。前年度まで3年連続Bクラスに低迷するなど8年間リーグ優勝から遠ざかっていた。変革が求められる中、新人の源田壮亮を遊撃のレギュラーに抜擢。外崎修汰ら実績のない選手をスタメンで積極的に起用した。チームは7月下旬から13連勝を飾り、首位のソフトバンクを猛追。惜しくも及ばなかったが若手は結果を残すことで自信をつけた。源田はフル出場で新人王に。外崎も内外野守れるユーテリティープレーヤーの地位を確立し、初の規定打席到達で2ケタ本塁打をマークした。チーム力が大きく底上げされ、18、19年のリーグ連覇につながった。

 当時の西武を取材した記者は振り返る。
「辻さんはよく我慢して起用したと思いますよ。外崎は6月に入っても打率1割台だったのにスタメンから外さなかった。起用法で『こいつを一人前にする』という強い覚悟を感じましたし、外崎もその後の活躍で期待に応えた」

 そして、今のチームにも可能性があると言う。
「今も蛭間拓哉、渡部健人、長谷川信哉と打撃で可能性を感じさせる好素材がいます。山村崇嘉、村田怜音はケガで戦線離脱しましたが、スケールが大きく将来主軸を張れる可能性を秘めた選手です。勝つための起用法になることは当然理解できますが、中・長期的なチーム戦略として蛭間、渡部、長谷川を一本立ちさせるため、多少の失敗に目をつむって、スタメンで20、30試合使い続けてはどうかと思います」

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監督の途中退任は考えにくいが…