川嶋由美子さん/2002年、現パーソルキャリアに入社。同社は今年"はたらく"の考え方をひもとく「はたらクイズ発表会」を開催(写真:本人提供)

企業の制度見直しを

 九州支社に異動希望を出すという選択肢もあったが、異動となれば仕事内容は変わってしまう。リモート勤務制度によって、

「自分が選択できる幅が増えて、より働きやすくなったなと思います。夫と普通に一緒に暮らせるありがたみというか、幸せも感じています」(村岡さん)

 そんな話を聞くと、やっぱり転勤はない方がいいと思うが、根本的な問題は転勤の有無ではなく、職場がそれぞれの思いや事情を理解していないことにある。

 同じ職場で働き続けたいと願う人について、転職サービス「doda」副編集長の川嶋由美子さんは、

「その会社に勤めることが、自分のキャリア軸だと強く認識している人だと思います」

 と指摘。この会社で仕事を成し遂げたいと決意している人であり、企業にとっても貴重な存在なのだ。そんな人たちが働き方やキャリアを主体的に選べるようになるために、企業側の制度の見直しや新構築が求められている。

「会社としては、社員が転勤する時期を選べるようにしたり、例えば3年くらいの猶予が持てる後ろ倒し制度を設けたりすることができるといいでしょう」(川嶋さん)

 また、転勤のある業務よりも給料は下がるが、転勤しなくてもいい地域限定職のようなキャリアの道筋を提示するのも重要だという。

 家族の事情などで一度離れた職場に戻りやすい制度も必要だろう。出戻り社員の再採用を打ち出す企業も増え、人手不足の保育士は、業界への復職のための支援制度が広がっている。

自分で意思決定する

 とはいえ、転職が珍しくない時代だ。パーソルキャリアが公開した「はたらクイズ」によれば、「転職回数を気にしない」と回答した人の割合は58%で、女性で絞っても53.7%と半数を超えている。このことからも、2人に1人は転職に対するハードルが低いことがうかがえる。また、意にそわない転勤を迫られた時に、転職が選択されやすくなっているということも言えるだろう。

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