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 小さい時にいろんなおもちゃで遊ぶことは、情報処理能力や運動能力の発達に影響するという。スマホばかりに頼らない日常の大切さを説く眼科医・松岡俊行さんの著書「スマホアイ」(アスコム)から報告する。

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 見る力が大切な仕事も少なくない

 遠近感をつかむのに必要な両眼視機能など、臨界期に発達するはずの能力を伸ばせなかった場合、将来のさまざまな可能性もロスすることになります。たとえば、お子さんが、憧れの職業に就けなかったり、人一倍、苦労を要したりということが起こりえるのです。

 最近の憧れの職業ランキングでは、ユーチューバーが人気のようで、インターネットやスマホがいかに子どもたちの間に浸透しているかもわかります。

 一方で、サッカー選手や野球選手、運転士・運転手、パイロットや医師、美容師といった職業も人気の常連です。これらはいずれも、見る能力が重要なウェイトを占めています。遠近感がつかめなければ、球技は難しいですから、サッカーや野球、バレーボールなどで活躍することは、他の子よりハードルが高くなってしまうでしょう。

 大型や中型の自動車免許など、遠近感や立体感を調べる深視力検査をパスしなければいけない免許もあります。立体視ができないと、運転にも支障が出てしまうからです。電車の運転士や空を飛ぶパイロットも、この深視力検査などで両眼視機能がチェックされます。

 また、刃物を使う職業も両眼視機能が必要です。美容師や理容師のような器用にハサミでカットする作業は、微細な遠近感を認識する能力が必要なので、両眼視機能に問題があると難しくなります。私の知り合いにも、斜視があるために、精巧さが求められる手術が不得意で、苦労するという先生がいます。

 お子さんがせっかく抱いた将来の夢をスマホアイが原因で諦めざるを得ないとなってからでは遅いのです。「なんであのときスマホばかり見てしまったのか」と将来嘆くことのないように、スマホ以外のたくさんの刺激を入れてあげてください。
 

 経験値を上げて能力獲得のチャンスを逃してしまわないように

 臨界期は、見る能力に限った話ではありません。

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松岡俊行

松岡俊行

松岡 俊行(まつおか・としゆき) 医学博士。眼科専門医。 大阪市出身。京都大学医学部医学科卒。2019年、大阪府吹田市に江坂まつおか眼科を開業。スマートフォンによる子どもの視力低下や、眼球運動、両眼視機能への悪影響などを懸念し「スマホアイ」と称して警鐘を鳴らす。

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