自分が立てた電信柱は長さが約6.5メートル。6分の1を地中に埋めて高さは約5メートル。柱を登るのが下手ではしごを使って上がり、立ったまま作業した(撮影/山中蔵人)
この記事の写真をすべて見る

 日本を代表する企業や組織のトップで活躍する人たちが歩んできた道のり、ビジネスパーソンとしての「源流」を探ります。AERA2024年5月20日号では、前号に引き続きNTT・澤田純会長が登場し、「源流」である水海道電報電話局の跡を訪れた。

【写真】この記事の写真をもっと見る

フォトギャラリーで全ての写真を見る

*  *  *

 思いもしなかったことに出会うのが人生だ、と知った。それが、わくわくさせてくれたし、多くのことを身に付けて、キャリアの形成につながった。社会人になって、最初の仕事をした茨城県水海道市(現・常総市)でのことだ。

 就職して、数日、数週間で辞めてしまう若者が増えている、と聞く。すごくもったいない、と思う。先々、どんなにわくわくする舞台やドラマが待っているかもしれないのに、入った職場で何かが描いていたことと違うという、長い人生にとってごく些細に思えることで、歩くのをやめてしまう。

 もちろん、進む道を選ぶのは本人の自由だ。でも、「キャリアをつくれ」とあおり、転職情報で稼ごうという動きに、乗せられているように映る。経験も知識も乏しい段階で描いた通りの歩みなど、膨らみのない「予定調和の人生」で、面白くないよ。もっと仕事や人とたくさんの出会いを経験してから、どの道をいくかを考えても、遅くないよ──そう言ってあげたい。

 企業などのトップには、それぞれの歩んだ道がある。振り返れば、その歩みの始まりが、どこかにある。忘れたことはない故郷、一つになって暮らした家族、様々なことを学んだ学校、仕事とは何かを教えてくれた最初の上司、初めて訪れた外国。それらを、ここでは『源流』と呼ぶ。

次のページ