コンビニが生ビールを売る 「意外なデメリット」とは?
こちらも極めてシンプルだが、セブンが生ビールの販売を取りやめた理由の一つ目は、「店頭の治安悪化」の懸念があったからだろう。
「ヤンキーがコンビニ前でたむろする」という言い回しがある通り、コンビニ各社はただでさえ店頭で酒宴を始め、たばこをプカプカとふかす迷惑客に苦しめられてきた。
その中で、缶ビールよりも安くてうまく、「その場で飲むこと」に価値がある生ビールを提供するとどうなっていたか。あるスーパーマーケット運営会社幹部は「コンビニの前は、あたかも居酒屋の店頭と化していただろう」と見る。
「ついで買い」の起爆剤として売り出したのはいいものの、「あのコンビニの前では酒盛りをいつもやっていて、入りづらい」「酔っ払いに絡まれたくない」という悪評が立ち、来店客が減ったら元も子もない。
「イートインスペースで一杯やってもらえば良かったじゃないか」と思う人がいるかもしれないが、生ビール片手の酔客が店内に集まっていると、それはそれで迷惑だ。
見方を変えると、当時よりイートインスペースが普及した今も、そこで缶ビールなどを楽しむ人はあまり見かけない。結局は「店内で飲むより、近くの居酒屋で一杯やった方が落ち着ける」という顧客心理になっているのかもしれない。イートインスペースと店内飲酒の相性は意外とよくない可能性もある。
いずれにせよ、そうしたメリット・デメリットを天秤にかけた結果、「生ビール販売中止」という判断に至ったのだろう。
販売中止には「リベート」も関係!? 情報通が指摘
二つ目は、メーカーが小売店に支払う「リベート(販売奨励金)」が関係しているとみられる。
というのも、酒・アルコール類の業界では、メーカーが小売店にリベート(販売奨励金)を支払い、値下げの原資に充ててもらう商習慣が存在する。一定期間内の売り上げ額に基づき、メーカー側が報奨金のような形でリベートを支給する場合もある。
このリベートについて、コンビニ事情に詳しいジャーナリストによると、セブンの生ビール(正式には、生ビールとして小分けする前のバルク)の売り上げに応じて支払い予定だった金額は「缶ビールより少なかった可能性がある」という。
その状況下では、もし「店頭の治安悪化」を度外視して店頭でセブンが生ビールを売り出したとしても、得られる収益は「意外と物足りない」ものになっていたかもしれない。