竹下登元首相や青木幹雄元官房長官らを輩出した「自民党王国」の島根県では、衆院に小選挙区制が導入された1996年の総選挙以降、選挙区では自民党が全議席を独占してきた。自民党は今回、財務省出身の錦織氏を公認。多くの業界団体などから推薦を得た。
しかし、結果は立憲民主党の前職・亀井氏の圧勝。各種メディアの出口調査には共通点があった。自民党支持者の2~3割が亀井氏に流れているのだ。裏金問題で「今回は自民党にお灸を据えよう」と思った有権者が、亀井氏に投票したわけだ。亀井氏がもともと保守系で、選挙期間中も「ただちに脱原発」といった左派系の主張を封印。「地域の活性化」などに重点を置いたことも功を奏した。
自民党から2~3割が逃げて、その票が相手候補に乗るのだから、相乗効果がある。私はこれを「行ってこい現象」と呼んでいるが、まさにその現象を自民党の国会議員は目の当たりにしたのである。(政治ジャーナリスト・星浩)
※AERA 2024年5月20日号より抜粋