いったん開店した店も、関根容疑者が死体損壊容疑で5月6日に逮捕された翌日から閉店したという。

 アメ横から少し離れた、スナックや風俗店が集まる通りにある韓国人や中国人、日本人の女性が働く、あるスナックに宝島さんが来たことがあるという。

 店の女性たちはこう話す。

「ドンさんは知り合いに連れられて来ました。腰が低くて、やさしい感じでした。たまに道で見かけるときは、いつも奥さんが一緒でした」

「頑張らなければやっていけなくなるだけ」

 宝島さんと同じ朝鮮民族系の中国人で居酒屋を経営する男性は、

「同じ民族だから後輩みたいにかわいがってくれて、店にもときどき顔を出してくれていました。亡くなったのを知ってとてもびっくりして、言葉がない。一緒に共同で店を出そうという話もあったのに……」

 アメ横で力強く生き抜こうとする韓国人や中国人たちの姿が印象に残った。

 前出の韓国人経営者がこう話した。

「私たちにとっては、ここは外国だから自分が頑張らなければやっていけなくなるだけ」

 彼らにとっては、成功をおさめ高級タワーマンションに住んでいた「シンボリックな経営者」が宝島さん夫妻だった。

 宝島さんの店のガラス戸には、こんな貼り紙がしてあった。

「今後は経営体制を一新し、新たな取り組みやサービスを通じて、より良い飲食体験を提供できるよう努めてまいります」

(AERA dot.編集部・上田耕司)

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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