懲役9年は「短すぎる」
初公判で言い渡されたのは懲役9年――この量刑をAさんはどう受け止めたのか。
「正直、9年では短すぎると思っています。約1億5000万円をだまし取ったとして、詐欺グループの主犯格に懲役20年の判決が出たケースもあります。被害金額が変わらないのに、どうしてこうも軽いのかと思いました」
だまし取られた現金は、Aさんの元には1万円しか戻ってきていない。Aさんは「少しでもいいのでお金が返ってきてほしい」と語ったうえで、こう訴える。
「今、生活するだけで精いっぱいなんです。なんでこんな目に遭わなければいけないんですか」
渡辺被告は今回、詐欺罪のほかにも、だまし取った金の一部(1億1000万円)を申告せずに脱税したとして、所得税法違反の罪でも起訴されている。だが、Aさんはこれにも納得できないという。
「犯罪行為でだまし取った金になぜ税金がかかるのか。そもそも正当に得たお金ではないのだから、まず財産を差し押さえてから、そのお金を被害者への弁済に充てるべきではないでしょうか」
もっとも、違法に得た収入でも所得税はかかる。所得税法第36条には、収入金額とすべき金額は、その収入の基因となった行為が適法か否かを問わないと明記されている。