自動車トラブルや事故が起こると人は動転しがちだ。悪質なロードサービスによるトラブルが増えている(写真はイメージです/gettyimages)

 車のロードサービスをめぐるトラブルが急増している。昨年度、全国の消費生活センターなどに寄せられた相談件数は過去最多となった。なかでも目立つのが、若者がトラブルに巻き込まれるケースだ。

【写真】車のタイヤがパンク…なぜ悪質ロードサービスに引っ掛かってしまうのか

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「1980円から」のハズなのに

「『バッテリー上がりは1980円から』と書かれていたのに、5万円を請求された」「断ろうとしたら、高額のキャンセル料を提示された」――。悪質ロードサービスをめぐる相談が相次いでいる。

 外出先で車のバッテリーが上がってしまった首都圏在住の20代男性は、スマホでロードサービスを検索。「1980円からバッテリートラブルに駆けつけいたします」というサイトを見つけ、申し込んだ。

 だが、業者はやって来るなり、金額欄が空欄の契約書を男性に手渡した。説明もなく、書類に「レ点」を入れて同意するように迫った。男性は「そんなものか」と思い、言われるまま従った。業者は救援車から電気を供給する“ジャンピングスタート”でエンジンを始動。バッテリー交換は行われなかった。

 にもかかわらず、提示された金額は総額5万円。請求書には基本料金1980円に加え、緊急対応の費用や作業費などが記載されていた。男性は「高い」と思ったが、車は動くようになったので何も言えず、クレジットカードで支払った。帰宅して親に相談すると、やはり「高すぎる」という。男性は業者に返金を求めている。

 日本自動車連盟(JAF)によると、最も多いロードサービスの依頼は「バッテリー上がり」で、全体の約4割を占める(2022年度)。次に多いトラブルは「タイヤのパンク」だ。

タイヤのパンク「作業キャンセル」でも22万円

 運転中にタイヤがパンクしてしまったという東海地方に住む20代男性のケースは、請求額はさらに高い。近くのコンビニの駐車場に車を移動し、スマホで「タイヤのパンク」を検索。「格安料金で修理します」という業者を見つけ、修理を依頼した。

 ところが、現場に到着した業者は「修理には20万円以上かかる」と言う。びっくり仰天し、「話が違う。キャンセルしたい」と告げた。

 すると業者は「キャンセル料として15万円いただきます」と言う。そんな金額は不当だと男性は訴えたが、業者は「キャンセル料を支払うまでは帰らない」と強硬な態度を見せた。

 結局、男性はキャンセル料15万円のほか、料金を支払うまでに要した時間の加算として延長料金7万円、合計22万円を支払った。

「勤め先や親に言うぞ」

 業者があからさまに顧客を脅したり、虚偽の説明をしたりするケースもある。

 首都圏に住む10代の社会人男性はドライブ中、車がエンストしてしまった。車を路肩に止めて、ネットで検索、「最短5分で駆けつけます。料金は2万円から」という業者を見つけて依頼した。

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