藤波さんによると、約10年前までは、保育所が足りず待機児童が社会問題となった。結局、賃金が安くて、定期昇進の可能性の低い妻の方が仕事を休んだり辞めたりすることがよくあったという。保育所に預けられず、復職できない問題もあった。16年には、保育園の抽選に落ちた親のブログ「保育園落ちた日本死ね!!!」が話題になった。
AERAアンケートにも、約10年前に出産した女性のこんな声が寄せられた。
「出産のために仕事をやめた。働きたくても保育所は入れず、小学校に上がるタイミングまで就活できなかった」(大阪府・医療契約社員・47歳)
この10年で、企業も変わってきた。育休や時短勤務などの両立支援制度が拡充。ワーママは珍しい存在ではなくなり、待機児童は23年、5年連続で過去最少になった。
「出産育児を経ても働くことを『頑張っている』とみてくれる」(東京都・教育学習支援・46歳)
「上司もしっかり育休をとり子育てしながら仕事を続けているので、不利に感じる事は少ない」(千葉県・正社員・34歳)
30代で昇進のチャンス
AERAアンケートでもポジティブな変化が浮かび上がった。冒頭の38歳女性も、働きやすくなったと感じているという。
「在宅勤務はもともとありましたが、使えるのは子育て等の事情がある人という雰囲気でした。子どもが病気になった時など、やむをえない事情の時だけ使っていたのが、コロナ禍で誰もが在宅勤務となり、それがスタンダードになったことが大きかったです。罪悪感なく働けるようになりました」
藤波さんは、こう解説する。
「今は時短勤務が制度化されましたし、男性育休も整ってきて、預けながら働くことが無理なくできるような環境になってきています」
そんな環境の変化は、かつての「キャリアを積んで、30代後半以降で出産」の価値観にも影響を与えているようだ。AERAアンケートには、こんな意見が届いている。
「30代に入ると昇進のチャンスが巡ってくると感じるので、それまでに子どもがある程度の年齢になっている方がよいと思うから」(大阪府・製造業・56歳)
年齢と身体のことはもちろん、キャリアのことも考え、早く産んだほうがいいという価値観は確実に広がりつつあるようだ。