雨の後の万博会場予定地。水はけが悪く、なかなか水が引かないという(Aさん提供)

能登半島地震クラスには耐えられない

 そして、地盤の脆弱さも大きな問題だ。これは、万博だけではなくその後に計画されているカジノを含む統合型リゾート・IRにも障害となりそうだ。

 万博協会は会場予定地のボーリング調査を実施しているが、その調査結果に驚くのは、海外パビリオンの建設にもかかわる設計事務所の幹部だ。

「この数字を見てください」

 そう言って幹部が示したのは、万博協会が2022年9月に万博会場予定地の中で実施したボーリング調査の結果を表わす「ボーリング柱状図」。地下の地盤の深さによって、地盤の強度を示すN値がどう変わるかが、グラフになっている。

「N値が話にならないほど低い。能登半島地震クラスがあれば、とても耐えることができません」

 そう言って、設計事務所幹部は顔をしかめる。

 図を見ると、N値は、深さ5m50cmあたりまでは、強度が高い20から30の数値を示しているが、それより深い地点は、調査した20m過ぎの深さまで、3から1と、ほとんど強度のない地盤が続いている。

 一般的なマンション建設の場合、鉄骨を地中に打ち込み「支持層」と呼ばれる固い地層に届くまで、10mから20mとされている。だが、この図面では20mまで深く打ち込んでも、支持層がないことがわかる。

 この地盤の脆弱さが、あるヨーロッパの国を怒らせたのだと、設計事務所幹部は言う。

 この国は、参加国が独自で建設する「タイプA」のパビリオンを予定していた。しかし、

「地盤が想像以上に弱くて、タイプAで強度を保って建設するのは開幕まで時間がなく難しいとゼネコンから指摘があった。しょうがないので、プレハブで建てて外装をデコレーションする方法でやるしかない。この国から視察にきた人は、『なぜこんな地盤が弱く、危ないところが会場なんだ』と怒っていました」(設計事務所幹部)

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建物が傾く可能性も