JR敦賀駅。高さ37メートルで、新幹線の駅では日本一の建物の高さとなった。奥が新幹線ホームで、手前は在来線のホーム

 駅舎の高さは新幹線駅として日本一を誇る37メートルで、12階建てビルに相当する。デザインコンセプトは「空にうかぶ~自然に囲まれ、港を望む駅~」。その名の通り、晴れた日には、敦賀湾の青く透明な海も望むことができる。

利用者の負担増区間も

 だがしかし、手放しで喜べることばかりではない。

 鉄道ジャーナリストの松本典久さんは、「大阪・京都~北陸、あるいは名古屋・米原方面~北陸は利用者の負担が増えた」と指摘する。

 新幹線が開通すると、並行する在来線を経営することはJRにとって過重な負担となるため、JRから分離されるのが通例だ。今回もJR北陸線金沢-敦賀間は、第三セクター事業者に経営を移管された。そしてそれに伴い、大阪や名古屋から福井や金沢に直通していた在来線特急「サンダーバード」「しらさぎ」が敦賀止まりとなった。乗客は、金沢方面に行きたい場合は、敦賀での乗り継ぎが必要になった。

「例えば、大阪-金沢間の利用は、従来よりも22分短縮されました。しかし、一方で利用にかかる価格も変化し、特急料金は在来線分だけでなく、新幹線分も負担することになり、大阪-福井間2730円から3880円と特急料金が1・5倍。ブーイングも起きそうな気がする」(松本さん)

 先の川島さんは「分断が起きた」と批判する。

「北陸は関西と経済的にも結び付きが強かった。政策だけが先行して、関西からの乗客を無視している」

 地元からも不安の声が上がっている。

「二次交通をもっと大切にしてほしい」

 こう話すのは、鉄道友の会福井支部長の岸本雅行さんだ。

二次交通の衰退を懸念

 二次交通とは「駅からの交通」のこと。福井県内には、JR越美北線(えつみほくせん)(越前花堂-九頭竜湖)とJR小浜線(敦賀-東舞鶴)、さらには私鉄の「えちぜん鉄道」と「福井鉄道」が走っているが、いずれも苦しい経営が続いている。

 岸本さんは、新幹線の延伸は「喜ばしい」としながら、こうした二次交通の衰退を懸念する。

「せっかく新幹線が敦賀まで来ても、二次交通が滅びてしまうようでは福井の活性化に繋がりません。二次交通にもっと目を向け、新幹線と一緒の街づくりをして福井を元気にしてほしい」

 ゆくゆくは大阪まで延伸する計画の北陸新幹線。国の想定では「2046年開業」となっているが、環境影響評価の遅れなどで、いまだ着工に至っていない。それまで敦賀での「分断」が続くのか──。北陸新幹線から目が離せない。(編集部・野村昌二)

AERA 2024年4月29日-5月6日合併号より抜粋

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