タサン志麻(たさん・しま)/1979年、山口県生まれ。大阪あべの・辻調理師専門学校、同グループ・フランス校卒業。著書に『志麻さんのレシピノート』他多数(撮影/写真映像部・和仁貢介)

 忙しい日常を忘れ、心の安らぎをもたらしてくれる読書だが、各界の読書家や識者はどんな本を読んできたのか。家政婦・タサン志麻さんに、おすすめの本を聞いた。AERA 2024年4月29日-5月6日合併号より。

【タサン志麻さんが繰り返し読んだ大好きな本はこちら】

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 フレンチの調理師時代は早朝から深夜まで立ちっぱなしで仕事。自分の時間はほとんどありませんでした。でも私は勉強したくて。フランス料理、フランス語、知りたいことがいっぱいあって、本をたくさん買って、寝る時間を削って勉強していました。

 そんな中繰り返し読んだのが佐藤真さんの『パリっ子の食卓』。いわゆるレシピ本ではなく読み物なんですが、イラストと文章で家庭での定番料理をエピソードとともに紹介しています。自分がレシピ本を作る立場になって伝えたいのは、いかに料理や食事を楽しむかということ。そういう楽しさが溢れた、大好きな本です。

 フランスでは男女問わず楽しく料理を作っていて、そんな姿を日々見ているので、子どもたちも自然に料理を作ることができます。

 家政婦として忙しいご家庭に行くなかで、日本だとまだ母親を苦しめる仕事になっているような気がして。もっとみんなで助け合って、忙しい時は買ってきたりして、フランスのように料理を作ることも食べることも楽しめるようになるといいなと思います。

食事することで救われ

 2冊目は『フランス料理の源流を訪ねて』。フランスの地方の風景や食文化を写真で紹介するもので、調理師時代には高くて買えなかったんです。お金に余裕ができてようやく買えたという本で、私の中ではフランス料理って今でもこの本のイメージなんです。土地があり食材を作っている人がいて文化がある、そこから料理が生まれている。フランス料理ってそういう地方料理がベースなんですよね。

 小川糸さんの『つるかめ助産院』は、食事をすることで病んでいた妊婦さんが救われる話です。料理人になった以上三つ星のレストランのシェフになりたい、といった夢が持てなかった中で、自分の料理人としてのあり方、私はこういう料理を作りたいと改めて思わせてくれた小説です。

 家政婦の仕事を通して、みんなそれぞれ味覚があって感覚が違うということがよくわかりました。

『志麻さんのレシピノート』は私にとって初めてのイラストレシピ本です。イラストにしたのは、作る人に想像力を持ってほしい、自分の感覚を大切にして作ってほしいから。このレシピに自分で書き足していってほしい、そして次の世代にバトンタッチしてほしいという気持ちでレシピノートとしました。(構成/編集部/小柳暁子)

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