例えば知人が教えてくれて絶句したものに、「女性がドアノブを舐める」AVや写真集がある。裸の女性がひたすらドアノブを舐め興奮する様が描かれている世界だという。どうでもいい話だがドアノブには円筒状もあれば、取っ手タイプのものもあり……つまりは日常の道具を性器に見立て、誰が触ったかわからない不潔なドアノブを女に舐めさせる行為がエロいとされる世界が、この世には存在するのである。フロイト的な解釈がもったいないほどに、ただただ「女を貶め射精したい」という男性消費者の欲望と、「まだエロ化されてないモノをエロにして金にしたい」というエロ業界の企みが一致しただけの殺伐とした世界である。
他にも「使用済みナプキンを男性器にまきつけて射精したい」男たちに向けて、市販のナプキンを小分けにし赤いインクとセットにしたものが売られているのだとか。ビリビリに破いたストッキングをはいた自分の足に欲情する男たちに向けて、コンビニで売ってる500円くらいのストッキングを3000円くらいで売っちゃうのだとか。「下着の売り上げが落ちてるな〜」と不思議に思っていたら、常連客が下着泥棒で逮捕・勾留されていた話とか。……聞いている間は「そんなことあるのか〜!」とのけぞり面白がってるのだが、こう字で書いていると、だんだんと重たくなる話ばかりである。それは、エロが「サブカル」とか「おふざけ」とかいった身軽な装いをしながらも、どんどん細分化し過激化していく現実を見せつけられるからだろう。そこでは女の身体は徹底的に記号化され値段がつけられていく。女は単なる素材だ。
エロ文化には権威的なものをあざ笑う軽やかな力もあったはずだが、そんなものはとっくにノスタルジックな過去になってしまったのかもしれない。日本のエロは倫理なきビジネスであり、公共を溶かすような破壊力を持ちはじめているのではないか。