山崎貴監督(撮影/佐藤創紀・写真映像部)

ハリウッドの洗礼

山崎:小島さんもオファーが殺到して大変でしたか?

小島:大変でした。「権利を持っていないのに持っている人たち」が寄ってきたりして。

山崎:持ってる体で?

小島:はい。後は、プロデューサーのポジションに就くことが重要です。

山崎:ハリウッドはそうですよね。特にプロデューサーの権限が強いので、プロデュースして初めて日本での映画監督と同じようなポジションが取れる。

小島:山崎さんは脚本を書いて、監督もVFXもやる。これは強いです。あとは、一番上でなくていいからプロデュース権限は持っておくほうがいい。そうでないと「エンディングを変えろ」とか普通に言ってきますから。

小島秀夫監督(撮影/佐藤創紀・写真映像部)

山崎:そういう話を聞いていると、暗鬱たる気持ちになってきます(笑)。どうやって荒波を泳いでいけばいいんでしょう。

小島:信用できる監督の知り合いを作って、その人たちと相談するしかないです。彼らも痛い目にいっぱい遭っていますから。ギレルモ・デル・トロでさえ、半分くらいはボツになっているそうです。

山崎:ハリウッドは、サメがうじゃうじゃいるところに飛び込んで、食われないように泳ぐようなものだと言われました。日本国内でヒットさえすれば、なんとか大丈夫という時代がずっと続いていましたが、使えるお金の限界が見えてきちゃったので、そろそろまずいんじゃないかという危機感もあります。

小島:サブスクリプションが普及して、「イカゲーム」は韓国語なのに全世界で見られる作品になりました。「ゴジラ-1.0」も字幕でしたよね。5年前まではありえなかった。

山崎:それはすごい言われました。コロナのおかげだって。世界中の人たちが家でサブスクを通じて、アジアの作品をその言語のまま、字幕で見るようになりました。

(撮影/佐藤創紀・写真映像部)

──2024年2月には、ディズニープラスでドラマ「SHOGUN 将軍」が配信された。真田広之がプロデュースと主演を務め、製作総指揮は「トップガン マーヴェリック」の原案者だ。ハリウッドが手掛ける日本を舞台にした戦国スペクタクルドラマに二人も注目する。

山崎:作中の70%以上が日本語なのに、世界中で大ヒットしています。

小島:僕、「黒船」って呼んでいるんです(笑)。監督は海外の人で、プロデューサーも海外の人で、儲かるのは海外の人だから、日本の素材を積んでやってきた黒船。本当は出資も日本人がハリウッドから引き出して作るべきですが、まだそこまでいってないんですよね。

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