世界最低の出生率の背景にある教育費の負担や晩婚化、首都一極集中、男女格差などの課題は日本も同じだ。韓国の状況は他人事ではない(撮影/松沢美緒)
世界最低の出生率の背景にある教育費の負担や晩婚化、首都一極集中、男女格差などの課題は日本も同じだ。韓国の状況は他人事ではない(撮影/松沢美緒)
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 日本を上回るスピードで急激な少子化が進行している韓国。合計特殊出生率は2022年に0.78を記録。何が起きているのか。AERA 2023年4月10日号の記事を紹介する。

【図】急激に進む韓国の少子化

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 韓国の少子化が止まらない。1人の女性が一生の間に産む子どもの数を示した合計特殊出生率は2022年に0.78を記録した。少子化に悩む日本の1.27程度を大きく下回り、世界最低だ。いま韓国で何が起きているのか。

 12年に1.30だった合計特殊出生率は16年から7年連続過去最低を更新し、この10年間に4割減って0.78まで急降下した。出産を避ける要因の筆頭に挙げられるのは経済的負担だ。

 韓国では子ども1人当たりの大学卒業までの養育費が3億~4億ウォン(約3千万~4千万円)かかるとされる。7歳、6歳、1歳の子の母で会社員の金嘉英(キムガヨン)さん(37)はこう話す。

「家計の支出に占める教育費の割合が大きいのは事実。韓国は他国に比べて子どもにさまざまな習い事をさせたり、塾に通わせたりする。他の子が習っているのにうちの子だけ習わないわけにはいかない」

■小学生から受験戦争

 例えば小学生なら、テコンドーやピアノ、水泳、絵画などの習い事に加え、英語や算数、論述などの塾に通う。2~3カ所通うのは当たり前で、テコンドーやピアノは週5回が基本だ。小学生から大学医学部を目指す塾もある。熾烈(しれつ)な受験戦争は小学生から始まっているのだ。

 金さんは現在、在宅勤務と出勤を併用し、仕事を続けているが、「多くのワーキングマザーが退社を決心するのは、子どもを産んですぐよりも、子どもが小学校に入るタイミング」と話す。保育園は比較的遅い時間帯まで預かってくれるが、小学校は下校が早く、習い事や塾に通うにしても親や親に代わる誰かの手がかかる。産休・育休の制度はそれなりに充実してきたが、実は手のかかる小学生の親の働き方についてはあまり配慮されていないのが現実だ。金さんは「政府が主導して、小学生の子どもがいる親が在宅勤務を選択できるようにすれば、仕事と育児の両立に役立つと思う」と話す。

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