「いつか子どもが欲しい」とは思っていたが、きっかけがないまま40歳を迎えたというこの女性。都の助成金事業が始まる前、40歳から41歳にかけて3回の採卵手術を行い、合計15個の卵子を凍結保存した。全額自己負担で、かかった金額は合計90万円ほど。費用面はもちろん、採卵に向けて毎日打つホルモン注射や採卵手術など、精神的にも肉体的にも負担が大きかったが、「卵子凍結によって、妊娠・出産の可能性を少しでも保てるなら」という一心で臨んだ。
マッチングアプリや結婚相談所を通じ、婚活に励んだ時期もあったが、年齢が上がるにつれ、難しさとやるせなさを感じ、今は自然な出会いでパートナーを見つけたいと考えている。そうした中、卵子凍結を決めたのは、「いつパートナーと出会えるか分からない」という中で、年齢的な焦りが大きくなった背景もある。女性は言う。
「凍結保存している卵子があると思うと、少しだけ安心感があるけれど、パートナーとの出会いから、妊娠・出産に至るまでの道のりを考えると、正直気が遠くなります」
「相手を見つけないと」
仕事は好きだ。やりがいもあり、誇りを持って仕事をしている。だが、気づけばパートナー不在のまま41歳。「今になって、少し仕事中心で来すぎたかもしれないと思う」とこぼす。
「好きな仕事を頑張ってきた結果、プライベートが後回しになったことに後悔はしていません。でも年齢を重ねる中で、もっと他にできたことがあったんじゃないかと思うときもあります」
胸にズキッと突き刺さったのが、採卵した医師から言われた「卵子凍結も良いけれど、相手を見つけないと」という言葉。確かにいくら卵子を保存したところで、使い道がないと無駄になってしまう。そんなことは百も承知の上で、葛藤を重ねた末に凍結に臨んでいるのだからこそ言われたくはない言葉だった。
「私のことを思って言ってくれてると思うけど、そんなこと私が一番分かってる」
将来の妊娠・出産への備えとして卵子凍結に臨む女性の多くが、パートナーがいない現状がある。将来的に子どもを持つことを考えられるパートナーと、いつ出会えるかが分からないからこそ、未来に選択肢を残すために卵子凍結する傾向も根強い。