
だが、NCCUの村上副会長は、「処遇改善加算は手続きが煩雑で、特に小さな事業所は取得しない場合が少なくない」と指摘する。さらに「最も高い区分の処遇改善加算を取得しても、基本報酬の減額と相殺され、収入が減ってしまう場合もあるという試算も出ています」。
4月、介護報酬改定は施行された。村上副会長は「負の連鎖」が起きると警鐘を鳴らす。今のままでは収入が減って閉鎖する事業所がさらに増え、高齢になったヘルパーもこれを機に辞めていく人が多くなる、と。「そうなればサービスを受けられない『介護難民』が増え、家族が介護するしかなくなり『介護離職』を余儀なくされることになります。身寄りがなく施設に入ることもできない人は自宅で孤独死を迎えるかもしれません。今からでも基本報酬を元に戻すべきです」
例えば、防衛費を今の1.5倍にするお金があるなら、介護保険に財源を投入することも可能だろう。東京ケアの滝口恭子所長は、「若者が訪問介護の仕事を目指したくなるよう、介護職の賃金を上げ、介護職のイメージアップもしてほしい」と話し、こう続けた。
「10年後、20年後、自分たちの親や自分自身に訪問介護が必要になった時、利用したくてもヘルパーがいないか、質の悪いヘルパーしか利用できなくなってしまいます。そのことを、国は想像できないのでしょうか」
人は老いていく。ケアが必要になった時、誰もが安心して受けられるよう介護のあり方について、社会全体で考える必要がある。(編集部・野村昌二)
※AERA 2024年4月22日号より抜粋