社員同士が親睦を深める場といえば、以前は「飲みニケーション」だったが、コロナ禍を経て、どう変わったのか。社内コミュニケーションを大切にしている企業を取材した。AERA 2024年4月15日号より。
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コミュニケーションの円滑化や部署を超えた関係性づくりのために、あくまで手段の一つとして飲み会やそれに準ずる場を活用してきた企業も少なくない。AERAでは18年12月3日号で「飲みニケーションが仕事に効く」と題した特集を実施し、こうした企業を取材した。コロナ禍を経たいま、どのように社内コミュニケーションを深めているのか、当時取材した2社に改めて聞いた。
クラウド人事労務ソフトを提供するSmartHRでは、コロナ禍が明けた現在もプロダクトサイドはフルリモート可、ビジネスサイドは必要なときのみ出社する体制を採る。また、AERAが前回取材した18年に50人程度だった従業員数は1千人を超えた。外部環境の変化に加え、会社自体の体制や規模も急速に変化した。それでも、社内コミュニケーション施策を担当する山王千聡さんは言う。
「当社では、『オープン、フラット、遊び心』を社風として大切にしてきました。その基本的な考え方は今も変わりません」
フラットな議論の土壌
18年の取材の際は、18時を過ぎると業務に区切りがついた社員が社内のバーカウンターに集まり、経営幹部と若手社員が一緒になって缶ビールや缶チューハイを傾ける姿があった。雑談から始まり、「移転予定のオフィスのレイアウトをどうするか」という経営課題まで分け隔てなく議論している姿が印象的だった。バーカウンターはまさに、同社の社風を象徴していた。
このバーカウンター施策は今も続いているという。リモートワークにより働き方が変化したものの、出社時の偶発的なコミュニケーションや同僚との集いの場として活用。経営幹部がそうした場に参加する機会も多いそう。「オープン、フラット、遊び心」はいまも同社のコミュニケーション施策の根幹をなす。
業務上のやりとりは、個人情報を含むものなど一部を除いてチャットツール「Slack」のオープンチャンネルで行われる。フラットな議論ができる土壌づくりとして業務外のコミュニケーションにも力を入れ、部活動にはCEOも参加するという。半期に1度、全社員へ経営計画や目標を共有する「全社キックオフ」の際にはノベルティを製作するなど遊び心も忘れない。